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アルカリ土壌の中和処理と硫化水素ガス発生について

2014年3月5日

強アルカリ土壌を中和する際、まれに硫化水素ガスが発生することがあり注意が必要です。
アルカリ土壌に高濃度のドクターペーハー液剤を散布すると土壌表面が激しく発泡することがあります。

次の写真は石灰処理土(pH9.5)にドクターペーハー液剤5倍希釈液(高濃度)を配合した直後の状況です。ここでみられる発泡ガスの成分は二酸化炭素です。
土壌中の炭酸化物(たとえばセメント由来の水酸化カルシウムが大気の二酸化炭素と反応して生成された炭酸カルシウム)が瞬間的に強酸性と接触することで発生するものです。従って臭気もありません。
強酸性雰囲気での反応ですから、中和反応とともに発泡は10~20秒程度で終息してしまいます。

では硫化水素ガスが発生するケースを考えてみます。
硫化水素ガス発生要因は次の2点となります。

1.土壌に弱酸の硫酸塩が多量に含まれている
一般的な土壌はこのようなことはありませんが、注意が必要なのはセメント系固化剤で改良された土壌です。
セメントや固化剤の成分として、弱酸の石膏が多量に含まれている場合、これが原因で硫化水素ガスが発生する場合があります。特に改良直後のフレッシュな土壌を中和しようとする場合は注意が必要です。

2.上記の土壌が多量の酸、または強酸と接触したときに発生しやすい
pH10~11を超える土壌の場合、どうしても中和剤の配合量が多くなります。液剤散布の場合は濃度の高い希釈液を用いるケースがあります。

以上のとおり、硫酸根を含む土壌を中和すると瞬間的にpH2~3になるわけですが、この時に瞬間的な硫化水素ガス発生がみられます。土壌中のpH値は秒単位で中和反応が進むため、10~20秒程度でpH値は4程度まで上昇します。
この段階では硫化水素ガスの発生は止まってしまいます。どうしてもこのような土壌を中和処理する場合は急激に強酸性にならないように中和剤を少しずつ配合するとか、液剤の場合であれば希釈倍率の高い液を複数回散布するなどの方法を検討する必要があります。ドクターペーハー液剤には硫化水素ガス発生抑制のための工夫をしておりますが、それでも高濃度で、対象土壌に石膏やスラグが多量に含まれている場合、硫化水素ガスの発生がみられます。

下の写真はセメント系固化材で改良された盛土部分にドクターペーハー液剤を散布した時の発泡状況です。現場でガス検知管で測定しても地表付近で1~2ppm程度で風下側1m付近では臭気を感じるものの1ppm測定下限値でした。硫化水素ガスは0.25ppm以上になると感じ、不快臭ですので住宅密集地などで散布する場合は注意が必要です。

同様の土壌を採取しドクターペーハー液剤の濃度を変えた試験を実施してみました。
下の写真は硫化水素ガス検知管ですが、上は原液散布、中央が10倍希釈液、下は15倍希釈液を散布し、密閉容器中で測定したものです。
上(原液):60ppm
中央(10倍希釈液):50ppm
下(15倍希釈液):2ppm
あくまでも密閉容器中での測定ですが、散布箇所に窪地があり無風下での施工などといった場合にはガス発生に留意する必要があります。
当社では硫化水素ガス測定を無料で実施しておりますので、必要であれば土壌サンプルをお送りください。